「あたし、冴島 愛(さえじま あい)。 宜しくね!」

「うん、宜しくね。」


隣の席の子が声を掛けてくれた。健康的な少し焼けた肌に、長い髪の毛をオールバックのポニーテールで纏めている冴島さんは、見るからに活発な感じがした。


「あたしの事は愛でいいから!」

「私の事も心って呼んでもらえたら嬉しい。」

「呼ぶ呼ぶ〜! ってかさ、海外って何処に居たの?」

「ニューヨークだよ。」

「ニューヨーク!?」

「冴島さん! 色々気になるのは分かるけど、質問はHRの後にしなさい!」


先生に注意された愛は「ゲッ」と声を漏らした。その瞬間クラスは笑いに包まれた。その雰囲気につい私まで笑ってしまった。ギスギスした雰囲気もなくて、みんないい人そうで安心した。

HRが進むにつれ、緊張は薄れていった。先生の話に耳を傾けながら窓の外へと目を向けた。

_本当に戻ってきたんだ。

今頃になってそう実感した。高校二年生の春、私はここからまた新しい生活をスタートするんだ。

柄にもなく物思いに耽っていると、いきなりドッと人が押し寄せた。どうやらHRが終わったらしく、気づけば女の子たちに取り囲まれていた。せっかく薄れてきていた緊張が徐々に戻ってくる。