めくるめく恋心

千里と一緒に家を出て、途中で別れた。


「ただいまぁ……。」


_もうみんな出かけてる筈。

そう思いながらも恐る恐る家に入った。玄関に靴がないのを見てホッとした。千代さんと昭人さんは仕事、うーちゃんは部活でもういない。きーちゃんはまだコテージでゆっくりしている頃だろう。きーちゃんに関しては今日も帰ってくるか分からない。

_明日はきーちゃんも登校日だけど、ちゃんと学校行くかな?

真っ直ぐ自分の部屋に行き、ベッドに座って一息ついた。

そういえば葉山さんからメール来ていたなと思って、メールを打った。

_“おはようございます。 連絡が遅くなってすみません。 昨日は帰り着いて気付いたら寝ちゃってました。”でいっかな?

メールを送信してボフッとベッドに倒れこんだ。

_やっぱり自分のベッドが一番落ち着く。

葉山さんの他に春姫ちゃんと蒼汰君もメールを送ってくれていて、葉山さんに送った様な内容でメールを返信した。しょうがないよねと思いながらも、きーちゃんから連絡が一つも入っていない事に少なからずショックを受けた。

_前までのきーちゃんならメールくれてただろうな。

仰向けになって何となく手を上げると、掌の切り傷が目に入った。右手の傷の方が酷い気がする。何でだろう?と思ったけど、直ぐにあぁっと納得してしまった。

_石、持ってたからだ……。

その日はずっと部屋にこもっていた。千代さんたちに心配をかけたくなくて、体調が悪いからと部屋で寝たふりをした。

_明日は寝坊したふりをして、リビングに行かないで走って家を出よう。

ベッドの中ではそんな事ばかり考えていた。