本気の恋を相手にぶつける事が出来なくて、自分を誤魔化す様に付き合った彼が居た。けど、恭平が彼女と別れたと聞いて、あたしも彼氏と別れてしまった。本命を諦めようと付き合った彼だったけど、ちゃんと好きな気持ちはあった。それでもフリーになった恭平と時間を共有できる事の方が嬉しくて、彼氏を優先できなくなってしまった。


「あたしは取りあえず部活に生きるよ。」

「マジ!? 俺はヤダー。」

「ヤダじゃないよ。 スタメンなんだからもっとシャキッとしなさいよね!」

「バスケ好きだし頑張るけど、彼女が居たらもっと頑張れるのにー。」


_あたしは恭平がいるからマネの仕事凄く楽しいよ。

そんな事思っていても言えるわけもなく、「馬鹿じゃないの。」と恭平の背中を力いっぱい叩いてしまった。

最初はこんなやり取りだけでも、傍にいられるだけで楽しくて満足していた。けど今では物足りなくて、もっと近くに行きたいと思ってしまう。特別扱いしてほしいと、欲張りになってしまう。

片付けも終わり、いつもの如く右京と恭平と三人で駅に向かった。


「吉良の機嫌いつ治るわけ?」


そう言うと右京はチラッとあたしを見た。事情を知らない恭平は「何の話し?」と興味津々に聞いてくる。


「さーな。」

「さーなって……心メッチャ泣いてたよ。」

「心ちゃん泣いてたの!? ってか何の話!? 全然話が見えないー!!」