めくるめく恋心

体育祭当日、スタンドに座ってソワソワしていると直に頭を軽く突っつかれた。


「落ち着け。」

「落ち着けるわけないじゃん! ココいつ来るのかな? もう来てるのかな?」

「さぁな。 そのうち会えんだろ。」

「何それ! ってか秋生も何でそんなに落ち着いていられるわけ?」

「……別に。」


身を乗り出して直の隣に座っている秋生に声を掛けると、素っ気ない返事が返ってきた。私はココに会えると思ったらやっぱり嬉しいし、久しぶりの再会にドキドキする。私がこんなに落ち着かないのに、秋生が平然としてられるわけない。


「キャー!! 吉良君頑張ってぇぇぇー!!!」


急に女子たちの甲高い声援が増え、ビックリした。

秋生の人気も凄いけど、吉良君の人気はそれ以上に激しくて凄い。校内では怖いって言われる事の多い直も他校の女子からは人気があるみたいで、ちょいちょい告られてる。信用してはいるけど、やっぱり気持ちのいいものでもないし心配になる。


「吉良君の紙何て書いてたんだろ?」

「吉良くーん!! 私たち一緒に走るよぉぉぉー!!」


いろんなところから似たような声が上がっている。吉良君にその声が届いているのかいないのかは分からないけど、吉良君はそんな女子たちに目もくれず、どこかへ走って行ってしまった。

一瞬姿が見えなくなった吉良君だけど、コースに戻ってきた吉良君が手を引いている女の子を見て、思わず立ち上がった。