ズボンのポケットからスマホを取り出した吉良君は、操作をするとスマホを差し出した。画面には満面の笑みのココの姿が映っていた。

スマホを受け取り、直と食い入るように画面を見た。

鎖骨辺りまでだった髪の毛は胸下まで伸びていて、元々綺麗な顔立ちだったココの顔は、化粧のせいなのか更に綺麗に大人びて見えた。


「……ココだ。」

「信じてなかった訳じゃねぇけど、あいつ、マジで生きてたんだな。」

「この制服……東稜(とうりょう)?」

「そうですよ。 今年の春に東稜高校に転入したんです。」

「今まで何処に?」

「事故後はニューヨークで生活してたんです。 詳しい話はココちゃんに直接聞いて下さい。」


私の手からスマホを取ると、吉良君は「それじゃ。」と言って教室を出て行った。

気付けば直の手をギュッと掴んでいた。そんな私の手を直もギュッと握り返してくれた。


「本当にココだったね……。」

「あぁ、そうだな。」

「体育祭の日、本当に会えるかな?」

「会えなかったら、会いに行きゃいいだろ。」


_そうだよね。

直は今にも泣きそうな私の手を取り、誰もいない空き教室へ連れて来てくれた。

直に抱き付いて胸に顔を埋めた。静かに泣く私の頭を優しく撫でてくれた。嬉しくて泣いているのか、死んだと知らされて辛かった時の事を思い出して泣いているのか、自分でも分からなかった。