指先が離れ、見上げると千里先輩と視線がぶつかった。

千里先輩の柔らかく笑うところは結構好き。なんだか安心する。


「テスト最終日、終わったら遊びに行かない?」

「え……でも、その日から部活始まるんじゃないんですか?」

「たまには息抜きしないと部活も頑張れなし、付き合ってよ?」


_夏のインターハイに向けて大変な筈なのに……。

千里先輩の優しさは素直に嬉しかった。


「本当にいいんですか?」

「俺が誘ってるんだからいいに決まってるでしょ。」

「じゃあテスト最終日楽しみにしてますね。」

「俺も楽しみにしてるよ。 じゃあ俺は部活に戻るね。」

「はい。 怪我しない様に気を付けて下さいね。」

「ありがとう。 心ちゃんも帰り気を付けてね。」


千里先輩のお蔭で涙も止まり、私は急いでバイト先に向かった。

バイト中は気付けばついボーっとしてしまって、何度か玉置さんに突っ込まれてしまった。「すみません。」と謝ると玉置さんからは「たまにはいいんじゃない。」と言われた。

自分の恵まれた環境に甘んじてばかりじゃ駄目だなと反省した。

秋ちゃんの事でも落ち込んでばかりはいられないと思いながらも、上手く気持ちは切り替えられなかった。秋ちゃんと加賀美さんが二人並んでいるところを何度もイメージしてしまう。その度にお似合いな二人だなと思ってしまう自分が嫌だ。

明日からバイトは休みもらってるし、今は兎に角頑張って来週のテストに意識を集中させよう。