めくるめく恋心

彼女はそれだけ言うと直ぐに行ってしまった。

堂々としていて真っ直ぐとした強い目。小柄で可愛い顔をした彼女はとても凛々しかった。

_あの子が秋ちゃんの彼女……。

秋ちゃんはカッコイイし、彼女がいないわけないのに、そんな考えなくて……彼女の存在に胸を大きくえぐられた気がした。

_早く行かなきゃ、バイトに遅れちゃう。

そう思うのに、思うように足が動かなかった。おもりがついてるみたいに重くてしょうがない。つい流れてしまう涙を何度も拭った。顔が上げられない。


「心ちゃん!!」


後ろから千里先輩の声がして、慌てて涙を拭った。

_笑え、私。


「千里先輩! お疲れ様です! どうしたんですか?」


振り返るとすぐ近くまで来ていた千里先輩に声を掛けた。千里先輩は走って来てくれたようで、少し息が上がっていた。


「どうしたのは俺の台詞なんだけど?」

「え……?」

「どうして泣いてるの?」

「っ……何言ってるんですか。 泣いてないですよ。」


笑ってみせると千里先輩に抱きしめられた。驚きすぎて固まってしまった。けど直ぐにハッとなって慌てた。