めくるめく恋心

「お父さんもお母さんもお姉ちゃんも……みんな居なくなっちゃった。 起きたら体動かなくって、体中が痛くて、機械音がして……っ、一人ぼっちだった。 集中治療室を出てから聞かされたの。 私だけが生き残ったんだって……。」


家族が死んだって聞かされた時、急に目の前が真っ暗になった。

会話が尽きない車内で笑い声も絶えなかった。お父さんのくだらなくて笑えるおやじギャグ、お母さんの呆れた笑い声、お父さんのおやじギャグが大好きなお姉ちゃんの笑い声、いまでも耳に張り付いて離れない。

恵奈ちゃんに手を握られ涙が頬を伝って落ちた。


「気付いた時にはお通夜とか火葬とか色んな事が終わってた。 ニューヨークに住んでるお父さんのお兄さん夫婦に引き取られて、今年の春日本に戻ってきたの。 今は従兄弟のお家でお世話になってる。」

「従兄弟って、吉良君のところ?」

「うん、そうだよ。」

「でも、どうして死んだ事になんか……。」

「お父さん刑事だったでしょ? 危ない事件を扱ってたらしくて、その関係で命が狙われたなら私も危ないかもしれないから、安全が確保できるまで死んだ事にさせてもらうってお父さんの同僚に言われて……。」


いつも忙しくてあまり家に居ないお父さんだったけど、家に居る時には優しかったし、私たち家族との時間はちゃんと作ってくれていた。そんなお父さんがまさかそんなに危ない仕事をしてるとは思っていなかった。お父さんの同僚からは組織犯罪がどうのとか言われたけど、未だに分かった様で分かっていない。


「事故でケータイなくしちゃったけど、みんなに連絡しようと思えばできた。 けど私に余裕がなくて、日本に帰ってくるのもこんなに遅くなっちゃった……。」

「日本に戻って来たって事は、ココは安全って事だよね?」

「うん。 あの事故は本当に運の悪い事故だったの。 お父さんの仕事は関係なかった。」