そしてこれはあとから流れた噂の話
何組かの女子生徒がしぃに想いを寄せていて
先生達にしぃのことを聞いたらしい
すると先生は
"本人の要望で事前に転校することは教えなかった"
そう言ったらしい
"本人の要望で"
しぃは、誰にもサヨウナラを言わずに
ひっそりとまるで自分が
最初からいなかったかのように
すっとどこかへ消えていってしまった
「大丈夫なの」
昼休みに中庭のベンチでお弁当を食べながら
独り言のように風斗は言った
「私は大丈夫だよ。これで良かったのかも。これでしぃのこと、忘れられる。」
そうは言ったものの自分でも思ったんだ
"強がってる"って
やっぱり寂しいと思う気持ちはどこかにあって
せめて私には教えて欲しかった
そう思う自分もいて
でもそれを認めたくなくて
いい方に捉えたくて強がった
"大丈夫"、"大丈夫"、って言い聞かせた
「探さなくていいの?」
「相手はしぃだよ。探しても見つかんない」
誰にも言わずにひっそり消えたしぃのことだ
そう簡単にこの学校の生徒とばったり会うような
そんなところにはいないと思う
きっと遠くて
誰も自分のことを知らないところへ
それに、私は
しぃを探す手がかりも何も無い
しぃを探し出す理由も、ない

