私が走り出すと
そのリップ音はピタリと止まって
駆け出す音が聞こえた気がした
そして
「ひなた!」
"大好きだった"彼が
私を呼ぶ
止まっちゃいけないのに
足が止まる
けれどしぃは、それ以上前に進まない
できた二人の距離は縮まらない
「俺さ…」
そうしぃが言いかけた時
「な、なんだ!好きな人いるんじゃん!」
遮るように私の口が動いた
「おっかしいと思ったんだよね!しぃみたいなモテ男が?私みたいなの、相手にするなんてさ…?良かったよ!いい人見つけたみたいで!」
くるっとしぃの方を向いて
街頭の下で、最後に
しぃに向ける笑顔を作った
溢れそうだった涙はなぜかすっと引いて
笑いがこみ上げる
「バイト先の先輩なんだ」
「へ、へえ!そうなんだ!なんか大人な雰囲気の人だなあって思ったもん!…ごめんね、お邪魔しちゃって!じゃー、またね!」
上手く笑えてた?
また…出ちゃったなあ
いつの間にか癖になってたのかな
"嘘をつく癖"
我ながら…可哀想な女だ

