「入れよ」

「おっ、お邪魔します。」


和人以外の男の人ん家には入ったことがないから、少し緊張しつつ、部屋に入った。


星夜ん家は、当たり前だけど星夜らしい部屋で、綺麗に片付けられていて、白黒2色の部屋だった。


「適当に座ってて、今お茶持ってくるから。」

「うん、ありがと」


私はソファーに腰を下ろし、前にある真っ暗なテレビをボーッと見つめていた。


そしたら、体育館裏での出来事が頭の中に浮かんだ。


薄暗い体育館裏で、城乃君と女の子がいて、顔を赤くしながら話している様子が。

さっきのことを思い出しただけ、ただそれだけの事なのに、なぜか大粒の涙が瞳から頬を伝って、床に落ちた。

何で泣いてるんだろ。何で泣いてるんだろ。

別に、たいしたことじゃないじゃん。2人が、体育館裏に、いただけ。


「………え…」

「泣くなよ、俺が話し聞いてやるから」


私はいつの間にか星夜の腕の中にいた。


「話してみ。」


私は涙がおさまってからゆっくり口を開いた。


「わ、私ね、2年前の夏祭りの時、城乃君の事好きになったの。それで、ね、そこから話す機会が増えて、よく話したの。それで私、たまに朝だけ2人で話すようになったの。だから、心のどこかで城乃君も私のこと気になってるのかな、とか思ったこともあった。何度も自分の気持ち伝えようと思った、けど…けど…思ってるだけじゃだめだった。……いくらあの子より好きだって思っていても、伝えなきゃ…伝えなきゃ、伝わらないんだって……。」


星夜は私の頭をゆっくり撫でながら、うん、うん、と頷き、話をずっと聞いてくれた。


「日和は城乃の事、誰よりも好きなんだな。」

「うん」と私は頷き、気がつけば泣きつかれて、星夜の胸の中で寝てしまっていた。