「はぁぁぁ~…。最悪……。」
授業中に居眠りした事さえなかったのに、
居眠りしてしまったにもかかわらず、またもやも授業を止めてしまった…。
すぐそこの私の教室では、私がいなくなり授業を再開している。
窓の隙間から聞こえる、佐藤先生の声。
いつもより声音が荒だたしく、低かった。
よっぽど、怒らせてしまったのだと改めて思った。
3月の廊下はまだ寒く、
私は紺色の征服の襟をたて、マフラー替わりにしようと思ったが、
意外と襟は短く、マフラーの代用品にはならなかった。
仕方なく、先の冷たくなってしまった両手を乱暴にポケットに突っ込んだ。
「………さむ。」
最近は気温も高く、セーターなんて着なくても大丈夫だと思っていたが、こんな広い廊下に一人は寒いな…。
窓の外の先には、桜の木があった。
たしかこの学校も、桜の種類は『染井吉野』だったはずだ。
早くあの淡紅色の花弁を見せてほしいものだ。
そうしたら、4月は美咲と一緒にお花見気分の昼食を一緒にとろう。
美咲も花粉症などは持ち合わせていないのだから、
きっと快く受け入れてくれるだろう。
なんでだろう…。
今は、寂しい気分でいるはずなのに、寂しい気持ちがしない。
桜が、私の寂しさを覆い隠してくれた。


