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私の目の前には、桜の木がある。
私の好きな染井吉野。
まだ咲いていない蕾でも、何故か淡紅色のような気がした。
「早く、咲くといいわね。」
独り言だった。
けれどそれに答えるように、桜の木が少し揺れた。
「--んんっ。」
私の反対側から声が聞こえた。
そう言えば、私が2階の廊下で見た足も、この木の後ろにいた。
そう思うと、急に悪寒がしてきた。
私の足は動かなかった。
怯んでしまって…。
…けれど、私の心には見たいという探究心が混ざりこんでいる。
その正体が分からない以上、この不安さには開放されないから。
私は見る事にした。
その足の持ち主の顔を
。


