「陽菜ちゃん」
「……」
「陽菜ちゃん!あ~ぁ、寝ちまったのかよ」
「寝て…ないよ」
「嘘つけ!半分寝てんだろ」
なんか気持ちがよくて目は閉じてるけど、でも寝てない。
ちゃんと隼人お兄ちゃんの声が聞こえてるもん。
引き寄せられ隼人お兄ちゃんの肩に頭をもたせ
「う~ん、は、隼人お兄ちゃん大好き」
「はいはい。俺も好きだよ」
「うん、ありがと」
なんだか頭の中にコットンキャンディが詰まっているような甘く優しいフワフワした気持ち。
今なら空も飛べるような…
「カ、カクテル…のせい…」
「そうだな。強いつったのに一気に煽るから回ったかもな」
「で、でも美味しかった」
「ん、そりゃよかった」
肩に乗せた頭を大きな手のひらが包む。
ごつごつしているけど優しい手。
その手に触れられると安心出来る。
きっと隼人お兄ちゃんの前では背伸びしなくていいから。
「は…やと…お兄ちゃん」
「ん?」
「ま…た…この…カクテル…飲ま…せて」
「あぁ。今度はまた違うのを飲ませてやるよ。あのカクテルはもう役目を終えたから」
「う~ん、や、やくめ?…」
頭に霞がかかったのか隼人お兄ちゃんの声が遠くから聞こえてくる。
こんなに側にいるのに。
隼人お兄ちゃんの体温がこんなに温かく感じるのに。
声だけが遠い。



