Lost Love~恋の序章~




「こりゃ酔ってんな」

隼人お兄ちゃんがボソッと。

いや、酔ってませんから。

勝手に決めないでほしい。

「陽菜ちゃん、ほら水」

「水なんかいらない。隼人お兄ちゃん、イチゴ返してよ。さっき私の横取りしたじゃない」

文句を言いながらも涙が流れてる。

「分かった。分かったから先に涙拭こうな」

ハンカチを取り出して目に当てて拭ってくれる。

「泣き上戸か」

「なんか言った?」

「いーえ、なにも。ほらイチゴ」

イチゴを一つ取り渡そうと…

「食べさせて」

「ん?」

「食べさせてよ」

口を開けて

「やれやれ、どうしようもないお姫様だ。ん」

口に入れられたイチゴをかじり

「ウフッほんとに美味しい。あ~なんか嬉しいな」

「ん」

隼人お兄ちゃんがせっせとイチゴを私の口に運ぶ。

フフッ まるで親鳥に餌をもらう雛鳥みたい。

「なに笑ってんだよ?今度は笑い上戸か」

「なに?ま、何でもいいや。隼人お兄ちゃん」

「今度はなに?」

「隼人お兄ちゃんって本当にいい男よね」

「今頃気づいたか?ほら口開けて」

今度はマンゴーを。

うん、甘くて美味しい。

「優しくてさ、かっこよくてさ、大人で」

「そっ、俺はいい男なの。悠よりも」

「……」

悠ちゃん…

そうだ、今日は悠ちゃんの結婚式だったっけ。

あれからまだ数時間しか経ってないけど、なんか遠い昔のような気もする。

――