「は、隼人お兄ちゃん、い、今のは違う」
つい感情的になって口にしてはいけないことまで言ってしまった。
それも隼人お兄ちゃんに、悠ちゃんのお兄ちゃんに…
聞かれてはいけない人なのに。
「知ってるよ」
えっ?
「陽菜ちゃんが悠のことが好きなのは」
「……」
「子どもの頃からいつも『悠ちゃん大好き』だったもんな」
「隼人お兄ちゃん」
「悠は陽菜ちゃんの初恋の相手。そいつが他の人と結婚する。それもその相手のことも陽菜ちゃんは好きで…その結婚式にも出なきゃならない。つらいよな。とっくに諦めはついていて2人の幸せを願っても現実に花婿花嫁姿を見たら…心がチクッてするのは当たり前だ」
ウイスキーを飲みながら
「陽菜ちゃん今日はよく頑張ったな」
優しく言われると
「は、隼人お兄ちゃん」
我慢に我慢していた涙がとめどなく零れ落ちる。
「仕方ない。特別に肩を貸してやる。ん」
引き寄せられ肩口に…
そして『よしよし』って頭をぽんぽんと撫で続け…
「…ヒック」
「他の人から見たら子どもの頃の淡いおままごとみたいな初恋にしか過ぎないかも知れないけど陽菜ちゃんにとっては大切な初恋だもんな」
「ヒック…ヒック」
隼人お兄ちゃんはずっと頭を撫でて…
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