ドアから覗く白い手が、今度は彰夫の手を掴んだ。愛情の表現と言うよりは、逃がさないぞと言っているような握り方だった。
「酒が飲めないと思いこんでる彰夫は、本当は飲めるのかもしれない…。と言っています。」
白い手が、空のコップを彰夫に差し出した。しかし彰夫は、身体を硬直させてコップを受け取ることができない。飲んだら、自分はどうなってしまうんだろう。そう考えると眼の前の日本酒が心底恐ろしかった。
「口ばっかりね、あんたは…。とテルミさんが言っています。」
「そうだね…テルミの言う通りだ。…結局やってみなければ、何が本当の自分なのか、自分ではわからない。」
彰夫はコップを受け取ると、なみなみと日本酒を注いだ。
「彰夫さん。無理しないで…。」
心配する好美に彰夫は言った。
「本当の自分探しの旅に出発だ。」
「テルミさんが、大げさに言うなと言っています。」
彰夫は一気にコップを飲み干した。子供の頃の事故以来、初めてアルコールを身体に入れた彰夫。コップを口にした瞬間、確かにわずかであるが清々しい香りがした。案外スムーズに酒がのどを通っていく。飲みきった瞬間は、美味しかったのかもしれないと思った。なんだ、どうってことない。しかしそんな快感も束の間、やがて心拍数が上がり、額の血管が音を立てて血液を運び始める。身体中の血液が顔に集まってきたような気がした。頭痛が始まる。手首を見ると湿疹のようなものが見えた。やがて彰夫は、焦点が合わなくなった眼で、ゆっくりと部屋のドアが開くのを見た。
「彰夫って、本当に面白いわね。」
「そうですね。生理的にダメなものは、ダメだと、誰でも解ることなのに…。」
「こいつやっぱりひとりじゃ駄目ね。」
「はい。しっかり面倒見ないと…。」
彰夫は薄れていく意識の中で、テルミと好美が話しあっている声を聞いたような気がした。
「酒が飲めないと思いこんでる彰夫は、本当は飲めるのかもしれない…。と言っています。」
白い手が、空のコップを彰夫に差し出した。しかし彰夫は、身体を硬直させてコップを受け取ることができない。飲んだら、自分はどうなってしまうんだろう。そう考えると眼の前の日本酒が心底恐ろしかった。
「口ばっかりね、あんたは…。とテルミさんが言っています。」
「そうだね…テルミの言う通りだ。…結局やってみなければ、何が本当の自分なのか、自分ではわからない。」
彰夫はコップを受け取ると、なみなみと日本酒を注いだ。
「彰夫さん。無理しないで…。」
心配する好美に彰夫は言った。
「本当の自分探しの旅に出発だ。」
「テルミさんが、大げさに言うなと言っています。」
彰夫は一気にコップを飲み干した。子供の頃の事故以来、初めてアルコールを身体に入れた彰夫。コップを口にした瞬間、確かにわずかであるが清々しい香りがした。案外スムーズに酒がのどを通っていく。飲みきった瞬間は、美味しかったのかもしれないと思った。なんだ、どうってことない。しかしそんな快感も束の間、やがて心拍数が上がり、額の血管が音を立てて血液を運び始める。身体中の血液が顔に集まってきたような気がした。頭痛が始まる。手首を見ると湿疹のようなものが見えた。やがて彰夫は、焦点が合わなくなった眼で、ゆっくりと部屋のドアが開くのを見た。
「彰夫って、本当に面白いわね。」
「そうですね。生理的にダメなものは、ダメだと、誰でも解ることなのに…。」
「こいつやっぱりひとりじゃ駄目ね。」
「はい。しっかり面倒見ないと…。」
彰夫は薄れていく意識の中で、テルミと好美が話しあっている声を聞いたような気がした。



