彰夫は奈良公園のベンチに腰をかけて、必死に自分と好美やテルミとの接点の記憶を辿った。
『テルミが基本人格なのか?賃貸契約は好美としたはずだ。本人確認は…免許?いや免許証は持っていなかった。確か学生証だ。あれは好美の名前になっていた…どうして?保護者の確認署名もあったはずだ…偽造なのか?仮に好美が交代人格だったとしても、あんな性格の彼女が偽造なんて大それたことができるのか?好美はテルミのことを知らなかった。知らないふりをしていのか?そう言えば好美は教えてないのに俺の名前を知っていた。テルミは好美のことを知っていた。テルミは好美の名前を口にはしなかったが、好美の真似が出来た。しかし本当にそうか?急性アルコール中毒で倒れた時言っていたテルミのうわごとは、キャバクラに誘った自分のことを言っていたのか…。』
見直していくひとつひとつの記憶が整理できないでとり散らかり、彰夫の身体はパンパンに膨れ上がった。人間の心とは、決して立ち入れない暗黒の海溝のように、なんと深遠で不可解なものなのだろうか。彰夫は恐怖すら感じていた。もう自分ひとりで持ち切れない。彰夫は杉浦教授に電話を入れた。
「そうか…なかなか興味深い話だね。」
奈良ホテルのラウンジで彰夫の話しを聞いた杉浦教授が、コーヒーを口に含みなが言った。
「しかし、及川君はいつからか精神科の臨床ができるようになったんだい?」
彰夫は返す言葉が見つからなかった。
「別に及川君を責めているわけではないよ。専門医に連れていったところで、事態が改善されたかどうか解らない。心の健康については、まずそれを自覚し本人がその健康を望むかが重要な要素だからね。」
杉浦教授は話を続けた。
「及川君の話を聞くと確かにテルミさんが基本人格と言って間違いがいないようだね。最初に会ったのはテルミさんだし、及川君についての情報入手は、常にテルミさんの方が先行していたようだ。」
「でも…テルミは好美のことを知っていましたが…。」
「基本人格が交代人格について何も知らないということも、多くの事例がそれを示しているだけで、すべてがそうであるかどうかは誰もわからない。最近では、環境的痕跡から、基本人格が交代人格についての『人となり』について、ある程度察することができるのではないかという学説も持ち上がっている。」
『テルミが基本人格なのか?賃貸契約は好美としたはずだ。本人確認は…免許?いや免許証は持っていなかった。確か学生証だ。あれは好美の名前になっていた…どうして?保護者の確認署名もあったはずだ…偽造なのか?仮に好美が交代人格だったとしても、あんな性格の彼女が偽造なんて大それたことができるのか?好美はテルミのことを知らなかった。知らないふりをしていのか?そう言えば好美は教えてないのに俺の名前を知っていた。テルミは好美のことを知っていた。テルミは好美の名前を口にはしなかったが、好美の真似が出来た。しかし本当にそうか?急性アルコール中毒で倒れた時言っていたテルミのうわごとは、キャバクラに誘った自分のことを言っていたのか…。』
見直していくひとつひとつの記憶が整理できないでとり散らかり、彰夫の身体はパンパンに膨れ上がった。人間の心とは、決して立ち入れない暗黒の海溝のように、なんと深遠で不可解なものなのだろうか。彰夫は恐怖すら感じていた。もう自分ひとりで持ち切れない。彰夫は杉浦教授に電話を入れた。
「そうか…なかなか興味深い話だね。」
奈良ホテルのラウンジで彰夫の話しを聞いた杉浦教授が、コーヒーを口に含みなが言った。
「しかし、及川君はいつからか精神科の臨床ができるようになったんだい?」
彰夫は返す言葉が見つからなかった。
「別に及川君を責めているわけではないよ。専門医に連れていったところで、事態が改善されたかどうか解らない。心の健康については、まずそれを自覚し本人がその健康を望むかが重要な要素だからね。」
杉浦教授は話を続けた。
「及川君の話を聞くと確かにテルミさんが基本人格と言って間違いがいないようだね。最初に会ったのはテルミさんだし、及川君についての情報入手は、常にテルミさんの方が先行していたようだ。」
「でも…テルミは好美のことを知っていましたが…。」
「基本人格が交代人格について何も知らないということも、多くの事例がそれを示しているだけで、すべてがそうであるかどうかは誰もわからない。最近では、環境的痕跡から、基本人格が交代人格についての『人となり』について、ある程度察することができるのではないかという学説も持ち上がっている。」



