テルミは、立ち上がると家に向って足早に歩きだした。歩きながらも、人目もはばからず泣きじゃくる。なすすべもなく、彰夫は2メートルほど後ろをついて歩くしかなかった。マンションに着くと、テルミはそのまま自分の寝室に閉じこもってしまった。彰夫は彼女の寝室のドア越しに話しかけもしたが、中からの応答が無い。お酒でも飲まないかと誘ったが、ドアは開かなかった。彼女の寝室のドアのそばで腰を掛けて、辛抱強くテルミか好美が出て来るのを待っていたが、しばらくすると彰夫は床の上で眠ってしまった。
彰夫は窓から差し込む日の出の眩しい光で眼を覚ました。テルミが入って行った部屋のドアが開いていた。覗きこむと中に好美やテルミの姿はなかった。部屋を一通り見回ったが、彰夫ひとりでは誰も居ない。携帯に電話をしても、電源が切られている。ふたりは彰夫の前から忽然と姿を消したのだった。
彰夫は新横浜からのぞみに飛び乗ると、京都で乗り継ぎ奈良へ向かう。彰夫は改めて好美が姿を消した理由を考えてみた。卒業まであと少しだと言うのに、単位も残したまま、好美はいったい何処へいってしまったのだろうか。姿を消した晩の経緯から考えると、好美が自らの意思で出て行ったとは思えない。交代人格のテルミが消されることを嫌って連れ去ったとしか思えないだ。基本人格を抹殺することは、交代人格の消滅も意味するのだから、まさか極端な行動には出ないだろうと自らを安心させ、冷静になろうと努めた。
江ノ島ハウジングにある借主データから、好美の実家の電話番号と住所を調べた。まず実家に連絡取ろうと試みたが、掛けてみるとこの番号は使用されていないとのアナウンスが流れた。家族のものと偽って、美術大学の学生課にも電話してみたが、学生の出欠状況は把握していないと門前払いだ。どうも好美からは、休学届や退学届が出ている様子はなかった。
部屋でひとりぼっちの日が重なるにつれ、彰夫の心配も日に日に膨らんでくる。2週間も経つと、もうじっと待ってはいられなかった。まず彼女の実家に行ってみよう。好美はそこに居るのかもしれない。よしんば居なかったとしても、家族の話から彼女を探すヒントが得られるかもしれない。信子に一方的に休みを告げて、彰夫は奈良に向っているのだ。
「あれ、及川君じゃないか?」
JRのみやこ路快速の車中で、彰夫は意外な人物から声をかけられた。
彰夫は窓から差し込む日の出の眩しい光で眼を覚ました。テルミが入って行った部屋のドアが開いていた。覗きこむと中に好美やテルミの姿はなかった。部屋を一通り見回ったが、彰夫ひとりでは誰も居ない。携帯に電話をしても、電源が切られている。ふたりは彰夫の前から忽然と姿を消したのだった。
彰夫は新横浜からのぞみに飛び乗ると、京都で乗り継ぎ奈良へ向かう。彰夫は改めて好美が姿を消した理由を考えてみた。卒業まであと少しだと言うのに、単位も残したまま、好美はいったい何処へいってしまったのだろうか。姿を消した晩の経緯から考えると、好美が自らの意思で出て行ったとは思えない。交代人格のテルミが消されることを嫌って連れ去ったとしか思えないだ。基本人格を抹殺することは、交代人格の消滅も意味するのだから、まさか極端な行動には出ないだろうと自らを安心させ、冷静になろうと努めた。
江ノ島ハウジングにある借主データから、好美の実家の電話番号と住所を調べた。まず実家に連絡取ろうと試みたが、掛けてみるとこの番号は使用されていないとのアナウンスが流れた。家族のものと偽って、美術大学の学生課にも電話してみたが、学生の出欠状況は把握していないと門前払いだ。どうも好美からは、休学届や退学届が出ている様子はなかった。
部屋でひとりぼっちの日が重なるにつれ、彰夫の心配も日に日に膨らんでくる。2週間も経つと、もうじっと待ってはいられなかった。まず彼女の実家に行ってみよう。好美はそこに居るのかもしれない。よしんば居なかったとしても、家族の話から彼女を探すヒントが得られるかもしれない。信子に一方的に休みを告げて、彰夫は奈良に向っているのだ。
「あれ、及川君じゃないか?」
JRのみやこ路快速の車中で、彰夫は意外な人物から声をかけられた。



