君の声が聞きたい


この人、こんな澄んだ声してたのか。
少しだけ、マイナーな男女混合のバンドの女性ボーカリストの声に似てる。
…って、何考えてるんだろ。
俺は顔だけクルリと振り返る。


「…なんですか?」

「おはよう!」


ニッコリと満面の笑みで微笑まれて一瞬固まってから少しだけ頭を下げた。
そんな態度に嫌な顔することなく先輩はニコニコしている。
きっとこの人は何もない、真っ当で幸せな人生を送ってきたんだろうな。


「あれ?ヘッドホン変えたの?前のもカッコよかったけど今日のも良いね!」

「先輩に関係ないですよね?何で毎回毎回俺に構うんですか?ただの好奇心なら迷惑なんでやめて下さい。」


“迷惑”
俺は敢えてこの先輩が傷付いてくれそうな言葉を選んだ。
昔の記憶がチラリと頭の隅を掠める。
あぁ、俺はアイツ等に言わされてたんじゃなくて自ら出た言葉だったのか。
現に今だって…。

先輩は一瞬だけ固まった。
でも、直ぐに傷付いた顔を隠すようにやっぱり笑うんだ。
そんな先輩に胸にチクリとした痛みを感じ俺はすぐに学校に向かって立ち去った。