「気ぃ付けて帰れよー。」

「伸也は俺のおかんか!」

「だって、お前ヘッドホンで耳塞いじゃってるから危ねーもん。」


いくらこの世界の音が嫌いでも、その時その時で音量くらい調整してる。
俺だって命は惜しいからな。


「はいはい。じゃあな。」

「おう。」


伸也は片手を上げて前の扉から教室を出て行った。
俺たちは連んではいるが一緒に帰ったりはしない。
伸也は自転車通学で、俺は電車通学。
駅と伸也の家は逆方向にある。

伸也を横目で見送ってから窓の方に視線を向ければ、校庭で男子生徒が生活指導の先生に捕まっていた。
見たところ、1年だろう。
本当、この学校の1年は指導が厳しい。
俺もこのヘッドホンでよく捕まった。
全く、あそこまで行くと教師の執念さえ感じる。


「帰るか…。」


俺は鞄を持って、ヘッドホンはそのままに堂々と教師の横を素通りして校門を後にした。
つくづく、この学校は2・3年に甘いと思う。