夢色、虹色、涙色

リョウのマンション

「お邪魔します」
売れっ子ホストにしては、間取りこそ2DKだけど、テレビとソファーとベッド何もない部屋だった。
何も聞けない。ここまでの苦労を私は何も知らないのだから。

「座って」
促されてソファーに腰を降ろした。
リョウが隣に座る。授業中を思い出した。いつもリョウは
右隣で、その空気が大好きだったんだ。

コンビニで買ってきたお茶を飲みながら、聞いてくれるかな?とリョウがポツリポツリと話始めた。

「さやがこっちにいるとは思わなかったよ。どうすることも出来なかった。二度と会えないと思ってた。あれからー」

リョウが口を閉ざす、、、

私は泣きそうで、「うん」と答えるのが精一杯だった。

「あれから、色んな所転々として、俺はもう学校なんてどうでも良かったんだけど、親戚の家から学校に行かせて貰ったんだ」

「今ならさ、自己破産とか方法があっただろうと思うけど、あの頃はね、何で自分だけ全てを捨てて逃げなければいけなかったのか理解できなかった。恨んでたから」



「親父、自殺したんだ、、」
えっ? 言葉が出ない。

「自分だけ逃げたんだ。でも、今なら少しわかる。もうそれしか方法がなかったんだろうな。酔って転落したんだ。
事故か自殺かはっきりしなかったけど、遺書が出てこないから事故で落ち着いて」

「でも、そのおかげで借金殆ど返せたから」
リョウが泣いてる。ゆっくり背中をさする。
そんな事しか出来ない自分がもどかしい。
ゆっくり、落ち着いて子供をなだめる時の様に。

「俺に債務返済の義務はなかったけど、絶対に返してやろうと思った。それでいつか、いつか地元に帰って親父の仕事1からやろうって、親父の為にも堂々と生きていきたいから」

お互い涙でグシャグシャだった。
辛かったね。頑張ったんだね。たった一人で戦ってたんだね。

「ごめんな さや。俺は側に居てやれなかった」

もういいよ。話してくれてありがとう。

「リョウ」

「あたし、リョウが居なくなってからもずっと心の何処かにリョウがいて、忘れようとしたけど、無理みたい」

「でも、本当に勝手なんだけど、ホストとしての湊人を支える事は正直難しい。本当は本当に大切なら、夜働いても支えていけるバスなのに」

「そんな事望んでたらさ、とっくにお前に会いに行ってたと思うよ。泣きついてたと思う」

「今だってこんな姿さやだけには見せたくなかったのに。10年後かっこよくさやの前に現れる予定だったんだから」
リョウが笑う

「あたし、もう結婚してたかもしれないよ」

「あーそのパターンは考えてなかった」
泣き笑いだった。