【乙女心は秋の空】と、誰かが言ったらしい有名な言葉になぞるのなら


私だったら【過ぎゆく時は秋の風】と、詠む。


季語からすれば秋に詠むべきものだから、夏休みを迎えた私の時間には相応しくない。


が、身に突き刺さるような鋭さのある最近の時間を詠むならばと思うと、やはりこれが相応しい。


暑くて怠くてアイスと炭酸飲料が美味しい季節の真っ只中で、私はエアコンの効いた教室に毎日入り浸っていた。


というのも、進学校と言うだけあって勉強には1年次から力を入れていく方針らしいこの学校で、自己申請した課外に参加しているからだ。


現代文の小説を読みながら思い付いた先程の詩を書き留め、ふと、窓の外へ視線を動かした。


課外に冬は参加していない。


湊は受けずとも成績が良いので部活に専念しているのだろう。


どちらを取っても今の私にとってこの環境は好都合だった。


二人にどんな顔をして会えばいいのかわからない。


私の対応1つでこの関係が歪んでいくと、そんな事はあり得ないのに、きっと心のどこかで私はそう思っているのだろう。


自惚れている。


今でさえ私は、二人の…いや、彼女の瞳に自分が「特別」として映りえるのだと思っているのだ。


冬に会いたい。会いたい。会いたくない。会うのが怖い。


ずっと同じ言葉を巡らせては、スケッチブックに描いた彼女の姿を指でなぞる日々が続いていた。


そして、その手で何度も何度も指折り数えて待っていた。


彼女との約束の日を。