宝物を見つけた夏休み ~Dear アタシ~

『まぁこれに懲りたら俺に起こされる前に起きることやな。』
カズマの口調に真剣味を感じ,チカは驚いた。
『バァチャンは小さい畑と田んぼの世話や言うても,朝から働いてるんや。』
その通りだと思ったチカは伏せ目がちになりながらもカズマの言葉に耳を傾けた。
『もし,アンタにちょっとでも時間があるならバァチャンの手伝いしたって。
可愛い孫の前じゃ見栄はってるんだろうけど,結構あれで腰痛いとかよう言ってんねん。』
チカが真面目に聞いているのが伝わったのだろうか,最後には軽い口調と笑顔で話し終わったカズマの方を向きチカは,
『アタシってどこ行っても駄目駄目な子なんだなぁ~。…ごめんね。』と,自嘲まじりに呟いた。
そんな様子のチカを見て一瞬何かを口にしようとしたカズマだったが,何も言わずにハナ子の手伝いをしに台所の方へと歩きだした。
『アンタ喉かわかへん?お茶持って来たるから座り。』
最後にかけられたカズマの優しい言葉も,深く沈んでしまったチカの耳には届いてなかった。
(どこに行っても,アタシは恥かしい子なんだ…)
チカの胸では昨夜も中々寝れなかった原因である,あの事件が思い出されるのだった。



―――『アンタなんか死ねばいいっ!』―――
若い女の人の叫び声がチカを苦しめる。



『バァチャンごめ~ん。』
カズマの謝る声にハナ子は苦笑する。
『どうしたん?カズマが凹むなんて珍しい!
台風でもくるんちゃうかなぁ。』
ハナ子の軽快な口調にもカズマは,うなだれながら食器棚から小さなグラスを三つ出してダイニングテーブルに並べた。
『…あのチカって子は思った事口にださへんカンジやな。』
『おっ!カズマ,もうそんなにチカと喋ったん?』
冷蔵庫から出した冷水器から麦茶をグラスに注ぎながらカズマは,
『喋ったのは俺ばっかやで。』と,流しの前で胡瓜を切るのを中断して自分を見るハナ子に笑うのであった。
(あんだけ,貧相貧相言われたら普通言い返すぞ。)
『カズマ。アンタはおしゃべりで軽薄そうに見えても本当は優しい良い子やからなぁ。
チカと仲良くしてやって。』
『そやなぁ~。東京ディズニーランドの話しでも聞かせてもらうわ。』
ハナ子用に麦茶の入ったグラスを一つダイニングテーブルに置いたままカズマは,残り二つの