どんなに辛くても、前を向いて生きていこう。
ちゃんと真っ直ぐに生きて、私の人生を全うしよう。
それが母の願いであり死の意味であると思ったら、私は誰よりも誠実に生きなければと思った。例えあの時死ぬべき身だった事をどこまでもツイてない人生が証明していたとしても、私は母の為にも生に執着しなければと思った。
だから私ーー田中あかりは、大学生になると同時に親戚の家を出て一人で暮らし、将来に向けて沢山の事を蓄えている最中だったのだ。
ツイてない人生も母の愛の証だと、受け入れる覚悟の他にどこか愛おしく思いながら必死に今日まで生きてきたのだ。
それなのにーーたった今、この瞬間。
「っ、危ない!」
…え?と思った時にはもう、時すでに遅し。
急ブレーキの乱暴な高音と共にやって来た大きな衝撃が、私の身体をいとも簡単に宙へと放り出す。
『あかり、生きて』



