私から目を逸らしたサエキさんが、ポツリ、ポツリと、私の知らなかった事実を語り出す。急な事に理解が追いつかなかったけれど、黙って続く言葉を待つ事にした。もしかしたら最後の機会かもしれないと、漠然と感じたから。
「満足な死には、満足な生を。常に何か満たされない気持ちの答えを求めて、あの人が辿り着いた先が心だった。死神に足りないのは心だとあの人はよく言っていた。それを持つのは人間で、叶うのなら人間が育つ過程を間近で見たいと。それで、おまえに目を付けた。おまえ達親子は短命の家系で、死が近かったから」
「……」
「おまえも知ってると思うけど、管理は人間の前に姿を現せる。決められた寿命によって死んだおまえの母親の魂を貰って、姿を貰って、おまえの母親に成り代わった」
「…そんな事、あり得るんですか」
「管理の立場だったから出来た事で、普通はあり得ない。そんな突拍子も無い事。でもあの人はやった。結果、おまえと暮らした10年の後、あの日におまえの命と引き換えの死を選んで、おまえの寿命は伸びた。でもおまえの代わりに死んだ所で、決められた運命には抗えない。20歳にはおまえが死ぬ事もあの人は知っていた。なのに何故庇ったのか、俺には分からなかった」
『あかり、生きて』
お母さんの言葉が蘇る。母が残した最後の言葉。私の背中を押してくれた言葉。これは死神からの言葉だったという事実に、私は複雑な思いを抱く。



