「…良いよね?」

「だっ、ダメですっ!」

「なんで?」

「なんでも何も無くてっ、」

「別に痛くないよ?ちょっと貰うだけ」

「ちょっとでもダメはダメ…っ、サエキさんー!」

「て事だ。諦めろ、セナ」


サエキさんが後ろから金髪の人ーーセナと呼ばれたその人の襟首を引くと、グッと近づいていた私とセナさんの距離がだいぶ離れた。ホッと一息つく私を見て、サエキさんは笑った。可笑しそうに、それでいてどこか愛でるようにーーなんて、そんな風に見えたのはきっと私の勘違いだと思う。


「帰るぞ、あかり」


私の手を取って歩き出すサエキさんがとっても優しく感じたのも、きっと私の勘違い。大切にされているような気がしたのだって勘違い、そうに違いない。


「さ、サエキさん、あの…」

「あぁ。端末の充電、切れたんだってな」

「え?あ、えっと、充電…?」


するとサエキさんは、クスリと笑う。


「おまえ、本っ当ツイてないな」


困ったような顔をして、呆れたような言い方で、「目を離すとすぐこれだ。本当ダメだよなぁ」なんて、とても失礼な事も言う。

…だけど可笑しい。それにも何故か、どこか愛情があるような温かさを感じて…そんな事無いんだって、私は顔を背けた。