来てくれた。
サエキさんが…来てくれた!
「サエキさっ、」
「なんだ、早かったね」
安堵から、無意識にサエキさんの方へ向かおうと一歩足を踏み出した瞬間、私の行く手を阻むかのように、目の前にずいっと背中が現れた。
「ねぇ、そんなに大事?これ」
金髪の彼の背中だ。チラリとその背中越しに“これ”と、視線を送られて、私はビクリと身を縮込ませる。…怖い。
「俺のって、ズルイよねぇ。そんなに美味しいなら分けてくれても良いのに」
ニヤリと笑う、この人が怖い。美味しいって言葉が怖い。それが私の事だなんて、怖い。
「ねぇ、良いよね?少しだけ。こんな魂の香り、初めてなんだ」
うっとりと、私を誘うように問いかける彼の瞳は、先程同様にギラリと鈍く光る色があった。…狩猟本能に食欲、好奇心。そんなものが渦巻いているような色だ。こんなに自分の思いを瞳に映す死神は初めてだ。真っ暗な奥にギラギラと…すごく、すごく不気味。
まるで制御しているリミッターが外れて、その隙間から溢れ出しているかのよう。ドロドロに合わさって混ざり合ったそれは綺麗とは言えない。綺麗には見えない。死神を綺麗に感じた私はきっと、こんな感情の無い所に惹かれていたんだと改めて分かった。こんなの、人間よりも動物らしく見える。



