「だとしても、おまえは大人しくこのまま死ぬつもりなのか?あいつの願いも、おまえの今日までの努力も、全て無い物にして?」
彼はどうやら、私の事も母の事も分かっているようだった。あいつの願いも、なんて言い方は、母の事に違いない。全てを知ったその上で、私に選択肢をくれているらしい。
「生き残る方法が目の前にあるのに、おまえは本当に死ねるのか?」
…それは、遭うべくして遭った事故。19歳、もうすぐ20歳になる今、ここで死ぬしか無かった私。
私が生きる事が母の願いだった。だから母は私を庇った。私が生きなければ何も意味は無い。だから懸命に生きてきた、母がくれた人生だから。だから生きる事に執着してきた、それが母がくれた生きる意味だから。
でも、ここで私が死んだら何も無くなる。
私がここまで生きてきた意味も、今も生きられたはずの母の死も、
何も、無くなってしまう。
「…生きたい」



