とりあえず校舎を一階へと降りていく。

無駄だとは思うが、結界の外へと出た方が有利だからだ。

相手の手の中で戦うよりは、結界の外の方がいいに決まっている。

そして当然。

「…!」

敵も私達を結界から出すまいと仕掛けてくる。

一階に降りた所で、私は足音に気づいた。

身構える私と修内太。

…暗い廊下を、誰かがゆっくりと歩いてくる。

敵は一人だけだった。

小柄で、華奢な人影。

シルエットからして、甲冑を身につけているようだった。

となると、敵の魔女の従者か何か…?

人影は次第に近づき。

「お前が四門メグか」

数メートル手前で足を止めた。

…驚く事に、それは年端もいかない少女だった。

左右に分けた、新雪のような長い銀髪。

愛らしさと美しさを併せ持つ整った顔立ち。

その小柄な体には不似合いともいえる、エメラルド色の甲冑。

そして西洋の騎士風の出で立ちだというのに、腰には日本刀らしき剣を帯びていた。

「あら…私の名前を知っているの?どこかで会ったかしら?」

おどけた口調で言ってみる。

…会っている筈はない。

その銀髪の少女からは、この世界とは違う『匂い』がした。

異世界の匂い。

断定してもいい。

この少女は、何者かによってこの世界に召喚されたのだ。