その時、講義開始のベルが鳴った。
呆然としていた私も我に返ると、とりあえず講義室に入り席に着いた。
私は先程の事が頭から離れず、思い出す度に足がガタガタ震えた…
隣りの席に座っている友達が、私の顔を覗き込んだ。
「ねえ順子…
あんた顔色悪いけど大丈夫?」
「う、うん…」
話したところで、誰も信じてくれない。
それに話したところで、何の解決にもならない…
それよりも――
「ね、ねえ、ちょっと見て…」
友達の机の上に、自分の左手を置いた。
「ん…何?」
友達がキョトンとした表情で、こちらを向いた。
やはり…
この小指は、見えてないのか。
見えない以上、頼れるものは自分しかいない…
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