その時――
私のポケットから、携帯電話が落ちた。
あ…
そうだ、あの曲を!!
私は携帯電話を開き、桜井さんの曲…
【one】を再生した。
凄く温かく優しい、それでいて哀しい…
そんな桜井さんのメロディで、部屋中が満たされていく――
すると男の子の動きが止まり、佐知子の首から手が外れた――
「ゲ…グガッ
ゲボゲボ…ゼィゼィ…」
「さ、佐知子――!!」
男の子の動きが止まっている間に、佐知子を自分の背後に移動させた。
「や、山岸さん…
あなた勘違いしてるわ!!
桜井さんは誰も恨んでなんかいない…
誰も恨んでなどいなかったのよ!!」
男の子は、目にするだけで寒気がする程の形相で、私を睨み付け叫んだ、
「そんな筈はない!!
あんな裏切りを受け、恨まない人間などいるはずがない!!」
そして、再び私達に向かって歩き始めた――
.



