「え…?
『帰らぬ人』って…」


「桜井さんは、自分の作曲が盗作だと言われた事がトラウマになり、ギターを弾けなくなり…

なによりも、心底信じていた仲間達の裏切りを知って…



絶望の中で、自分の部屋で首を吊って自殺したの――」


茜さんは声を震わせながら、目に涙を一杯に溜めていた…

「あ、茜さん…?」

「私さえ…

私さえ、あの雑誌に掲載しなければ!!」


茜さんはついに、テーブルに俯せになって激しく泣いていた…

そして、重苦しい沈黙が続いた――


私はどう言葉を掛けていいのかも分からず、その光景を呆然と見詰めていた――



アイスコーヒーの氷が全て溶けてた頃、ようやく茜さんが顔を上げて口を開いた。

「…――私が、取材に行き始めた頃、練習を見に来ていた女の子をよく見掛けた。

その子は桜井さんの、彼女の様だった。


桜井さんは、彼女をこう呼んでいた――


.