「ありがとうございました」

私は何度も頭を下げると、スタジオGIGを後にした。



う―ん…

あの先月辞めたという、バイトの女の子の事なんだろうな。

出版社に電話したら、教えてくれるだろうか?


路地裏から駅前通りに出ると、先日貰った名刺を財布から取り出した。

そして適当にその辺りの縁石に座ると、早速電話をかけた。



プルルルルル…
プルルルルル…


「はい、北山出版社です」

「あの…
音楽雑誌担当者の、高橋さんお願いします」

「はい、少々お待ち下さい…」


暫く受話器から流れる音楽を聞いていると、先日の担当者が応対に出た。

「はい高橋ですが…」


「あ、私先日お伺いした者なんですが…」

「ああ、先日の…

で、今日はどんな用なの?」


私が尋ねる前に、高橋さんは思い出した様に話し始めた。


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