「去年まで…ですか?」

私は缶コーヒーを両手で握り、身を乗り出して聞いた。


「うむ…

去年音楽雑誌の特集にピックアップされ、自費制作のCDが売り切れる様になった。

まあ、当然と言えば当然だ。
元々、歌も演奏もプロのミュージシャンと比較しても、何ら遜色がなかったのだから。


しかし、それからグループ内がギクシャクし始めた。

あくまでも、今の路線で行こうとする者…

大手のレーベルと契約して、本格的に音楽活動を始めようと言う者と…


悲しい事だ」


オーナーは一気に缶コーヒーを飲み干すと、ベンチの隅に空き缶を置いた。


「もしかして…
それが原因で、ボーカルが入れ替わったんですか?」


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