私は午前の講義が終わると、電車に乗り立町に向かった――



立町は駅前が、10階建前後のビルが建ち並ぶオフィス街になっている。

昼間はスーツ姿のサラリーマンばかりの街だ。



その駅前の道を1本入った場所に建つ、茶色のビルに出版社はあった。

ビルの自動ドアを入り案内表示を見て、エレベーターで6階に上がる――


私は、「もしかしたら何かが分かるかも知れない」という期待をしていた。



エレベーターを降りると、すぐ目の前のガラスの扉を開けた。

室内には20人程の従業員が、忙しく働いていた。


私はカウンター越しに声を掛けた。

「すいません…」


私の存在に、誰も気付いてくれない。

「すいませ―ん!!」

大声を上げると、ようやく手前の背を向けていた年配の女性が、私の存在に気付いた。


「あ、はいはい!!
ごめんなさいね、聞こえなくて…

それで、どんな御用ですか?」


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