自転車を全速力で漕いでなんとか
バイト先である喫茶「コロボックル」に10分前にたどり着いた。
咲良に関しては少し息が上がっていて
「水ー水ー」
とうめいてる。
入学式の日に来た時に教えてもらった裏口から入っていくと
店内を掃除している店長と厨房の方で準備をしている2人の男性がいた。
「おはようございます」
と軽くお辞儀をしていうと、店長が咲良たちに気づいて
それからホールの1番太い柱にかけてある時計をチラリと見て
「あらぁ~?2人とも少し遅いわよぉ~?」
といつも通りのぶりっ子口調でお叱りを受けた。
「すみません・・・」
今度は深々とお辞儀をして2人して謝った。
「まぁ、いいわよぉ。初日だし、緊張のし過ぎできっとお手洗いにでもこもっていたのでしょぉ?」
「店長、飲食店でその話題は禁句です」
厨房にいた準備を終えた男性がすかさず店長の聞き捨てならない問題発言にツッコミを入れていた。
「まだ始まっていないからいいのぉ~」
そう言う問題ではないと思った末芽だった。
咲良はと言うと
「恵さん!私にお水をください!」
と話なんてどうでもよかったみたいで
水を要求しているのだった。

★☆★

コップ一杯のお水を飲み終えた咲良は
先に着替えている末芽を待っていた。
ちなみに、2人は厨房とホールどちらで働くのかと言うと
2人ともホールを担当することになった。
「着替え終わった。次、咲良だぞ」
奥の方にある扉から出てきた末芽は白いワイシャツに下は黒い綿パン
そして黒い前掛け姿だった。
いたって普通のカフェの店員と言う感じだった。
普通でないところがあるとすれば、それは末芽の容姿が人並よりは麗しいところだった。
咲良はそんな末芽の姿を見て
「似合ってるよ!」
と両肩をポンポン叩いた後に
更衣室へと入って行った。
咲良が着替え終わって出てきたときのことだった。
「恵さーん・・・」
という声と共にそっと出てきた咲良の姿はと言うと
ワイシャツはボタンがはち切れる一歩手前で
咲良のふくよかな胸が協調されていて
スカートはと言うと黒いスカートが本当にミニで
あと数センチ前かがみになれば中が見えそうなくらいに短かった。
「素敵よぉー!!咲良ちゃん!」
店長は困惑している咲良に寄っていき、べたべた触っている。
末芽はと言うと、そんな姿の桜を見て
出来るだけ自分が傍についていようと決心を固めたのだった。

☆★☆

着替え終わったところで店は開店した。
もうすでに並んでいたお客さんが続々と入ってくる。
満席とまではいかないが、3分の2以上の席はうまっていた。
その状態のホールをみて咲良は少し引いていたが
末芽はまぁ、この店ならそうだろうなと軽くうなずいていた。
まず、店長に言われたことその1
「お冷とお手拭きをトレイにのせて持って行って頂戴ねぇ~」
を思い出し、末芽はすばやくお冷とお手拭きを来店した客に順番に持って行った。
ホールには今、咲良と末芽のほかにも1人男性がいた。が
末芽は手本などなくとも今までこの店に通っていた時に見てきたホールスタッフの動作を
見よう見まねでやっているだった。
それなのに、その動作は美しく、完璧に見えた。
最初の家は水をこぼしたりとかしてもおかしくはないのに
ましてや、3分の2以上が一気にうまって
お客さんの人数の多さに動揺してもおかしくはないのに
末芽は動揺することなく難なく仕事をこなしていた。
その姿を見ていた先輩スタッフは
「これは即戦力だ・・・。イケメンだし」
と感心していた。
咲良はと言うと
「いらっしゃいませ!」
といつものほわほわした声でお客様をもてなし
末芽とは違い、水をこぼすとまではいかなくとも
お手拭きの数を間違えたり、持っていく卓を間違えたりして
新人らしい振る舞いだった。
その姿を見ていた先輩スタッフは
「間違っても、咲良ちゃんには愛嬌があるからなぁ」
と少し癒されていた。
店長に言われたことその2
「オーダーは聞いたことそのまま書いてもいいから省略しなくていいからまずは聞いて書くことよぉ~」
その通りに末芽はオーダーを受けていた。
咲良はと言うと、食べ物のことに関してはすばやい行動ができ、判断力もすばやくなるのか
オーダーを早口で言われてもさらさらと流れるようにメモを取っていき、復唱なしでも間違えずにオーダーを取ってくるのだった。
その咲良の取ってきた伝票を見ながら先輩スタッフが一言。
「さすがというか・・・意外というか・・・」
と感心なのか少し引いてるのかわからない声で呟いていた。
こうして、初めてのアルバイトはこのお冷出しと注文で4時間で終わった。