三十路バンドギャルの憧憬邪心LOVE Grail

二年前の元カレとかそうだった。

中小企業なんかで働けるかよ、と身の丈に合わない大手企業を受けては不採用通知を山積みにしていく男だった。


書類選考で落選するといつも、エントリーシート書いてる途中でやっぱ違うなってピンときてわざと落ちるような内容にしたんだよ、と口癖のように言っては、働きもせずに昼間っからパチンコに行ってチョコレートだけ握りしめて帰ってくる甲斐性なし。


大法螺でもいいから夢の一つでも語ってくれりゃまだしもそれもなく、ギャンブル三昧でニートを決め込む筋金入り。


度重なる就活催促の末、やっとパン工場で働けるようになっても一日で、上司がおれの力をわかってくれない、だから中小企業は願い下げだ、などと不出来な己のアイデンティティを死守するのに必死で前に進まず即退職。


加えて、私が風俗嬢であることを認知しながらも嫉妬すらせず、あらまぁ理解のある人だわ、なんて思っていたが、そりゃ風俗で稼ぐ金でヒモ生活してるんだから理解どうこう以前に金目当てで私のことなんか好きじゃなかったんだと思い直すのである。


仕事とて他の男に抱かれているのに嫉妬もされないって、女として完封負けした気分だ。

あんなやつとさっさと別れりゃよかったのに、私ってばどうしても最後の最後で泣きついてしまうのだ。