三十路バンドギャルの憧憬邪心LOVE Grail

好奇心もある。

が、第一は見ているだけで平和な気持ちになるからだ。

心を許した相手には笑ったりすんのかも。ま、今のところ脈なしなのは確定。

とっとと諦めろとの神からのお告げかもしれない。

 「ご馳走様」

あら、そういうのは言えるんだね。

 「いえいえ、どういたしまして」

 「アイコさん、ありがとう」

へ?

今何と言った?

 「洗物します」

え? え? え?

何それ、何?

消された炎の後に残る灰燼には、まだ赤い焔の種が埋もれていた。

想いは性懲りもなく膨れ上がる。

いつか、もしかすると、自分を好きになってくれるかもしれぬという淡い夢想だ。

洋祐という男が、そこまで入れ込むようなやつなのかといえば、まだわからない。

しかし、無表情で掴みどころのないミステリアスな男がベースのような低い声色で感謝を述べ、自ら率先して洗物をするギャップについ萌えてしまうのだ。

彼が放つ何気ない一言が、宛らウィリアム・シェイクスピアの戯曲の一節のように、この上なく感激するのだ。

こいつは只者じゃないわ!

 「いいよいいよ! 私がするから、えへへ、えへ、えへへへへ」

年下の新参者に気遣いの笑顔。

なんで私が下手に出てるのか。

いつの間にやら立場はあちらが上?

二十五歳からすりゃ、三十路ってオバサンなんだろうな。

などと思い耽りながらまさかの展開を期待して皿を洗うのだった。