三十路バンドギャルの憧憬邪心LOVE Grail

運ばれた先はインターチェンジ周辺のホテル街。

自宅利用者以外は大抵インター周辺のホテルを使っていた。

人を好きになるには、恋をするにはという方が適切か、そいつには順序がいる。

出会ってキスするまで何日かかるかってやつ。


風俗ってのはそういったまどろっこしい序盤の駆け引きや高揚を黙殺して、いきなり肉体を重ねる。

なので、一瞬で疑似恋愛状態となり、延いては恋心を抱かせる、或いは抱くことになる。

肉体の相性によっては本気になる客や風俗嬢もいる。

しかしながら、私はこの仕事で無数の男に抱かれたわりには、燃え盛るような感情に打たれたことは一度もない。

割り切っているから、そもそも客と付き合うと後々ややこしくなるので付き合わないとの信念があるから、当然、それらを粉砕するような劇的な邂逅をまだ果たしていないから、というのもあるのだろうが、我が心はよがり狂う身体に反して冷凍のマグロ状態。


彼氏がほしい強欲に駆られながらも、仕事とはいえ、男に抱かれても心揺れず。例えアンドロギュノスを凌ぐ完全なる肉体の一致があったとしても、金魚すくいのプロのように快楽だけを器用に掬い上げて終わってしまう。


もし、私がこんなのじゃなければ、客とも付き合ったりして、もっと早くに祝言をあげていたかもしれぬ。

実際に告白もよくされたし、稀に金持ちもいたのだ。まったくもって不便な心と体を手に入れたものだ。

では、客以外はどうなのだ?

一目惚れなんてなけりゃ、いい男を見たり知り合ったりすれば、そりゃテンションも上がっちゃうし、邪な気持になっちゃうど、ホントにそいつを好きになる前段階として胸が高鳴り、乙女回路がドクドク脈打っているわけでもない。


わかっている。


そいつは焦りと禁欲に裏打ちされた、ただの飢えた女の反射的な感情の発露。