三十路バンドギャルの憧憬邪心LOVE Grail

聞けば、前の勤め先の業績が悪化し、四十五歳以上の高給社員のリストラが行われたのだそうだ。

私でも知っている名の通ったインフラ企業だ。

支社で係長をしていた茅野氏は二つの選択を迫られた。

一つは退職金一千万をもらって即退職、もう一つは定年まで働けるが退職金は没収。

大手企業だけに退職金は相当な額だ。

茅野氏曰く、自分が高額の退職金をもらえる最終世代だったそうな。

茅野氏は即退職を選んだ。

国民年金に切り替えたことで給付額は減ってしまうが、加入していた個人年金保険を含む複数の保険と退職金でフォローできるとのこと。

五十になった今、雇ってもらえる仕事も限られる中、車好きだった茅野氏はタクシー運転手かデリヘルのドライバーのどちらかをご所望し、特定の人間を乗せる方が楽だとの結論を見出し、デリヘルドライバーに転身したのだった。


茅野氏、安定型極まれり!

舐めていた、ドライバーの多くは職を失い一般社会での再就職も困難なギリギリ組なのに、茅野氏ときたら、まるで定年後の趣味に盆栽を選びましたくらいの感覚。あぁ、アンタみたいな人は、私みたいな人を心で虚仮にするんだろうな、クソッ、お前まで私をバカにするのか!


 「あれ、リノちゃん、なんで涙目になってんの?」

 「ちょっと夕日が目に染みただけ」

 「もう夜だよ」


知ってる。