三十路バンドギャルの憧憬邪心LOVE Grail

 「リノちゃん、今日は予約のみね」

ドライバーの茅野さんは言った。

 「新規ないの? お店は広告費かけてんのか? 新しい客そろそろ入れてくんないとリピだけじゃ足りないのよね。たまにスポットできちゃうし」

だったらもっと出勤しろって?

私は週三日以上働いたら社会ストレスに圧搾されて死んでしまうのよ。

だから週三出勤で効率よくお金を得るのよ。

 「この前だって雑誌広告の撮影したけど、あれ、ほんとに使ってんの?」

 「僕に聞かれてもわからないなぁ」

チッ、バイトにしてみりゃ別次元の質問だったか。

 「茅野さんって、何歳になるの?」

 「あぁ、僕はもう五十歳だよ」

五十でこのポジションって、今後どうやって生きていくんだ。

 「結婚は?」

 「してるよ」

してるのかよ!

 「この仕事で食べていけるの?」

 「息子が二人いてね、どっちも社会人で、もう手がかからないしね。別に食う心配をすることもないんだよ。年金と仕送り、あとはこのバイトのお小遣いがあれば、いつか孫ができたら何か買ってやれるし」