三十路バンドギャルの憧憬邪心LOVE Grail

ねぇーよ!

そりゃ、誰もこねぇよな、怪しいもん、どう考えたって。

しかし、仲介業者のやり手営業マンに、もっとオススメしろよ、と大家から口添えしてもらえば、何人かは物件を見にくるようになった。

部屋に入るなり微妙な顔をする客と、仲介業者の営業マン。

おい、お前がやる気ないふうでどうする、営業マン。 

売りは3LDKで格安であること。

立地も繁華街から離れているため、若者の需要は絶望的。

急な坂道の中腹に建っているので老人にすら嫌煙される。

いざ入居する気になってもわざわざルームシェアの必要はない。

部屋は有り余っているわけで、家賃が定価になる(といっても安い)のを飲めば独り暮らしはできる。

トイレを風呂の残り湯で流すくらいの余程の節約家でなければルームシェアを希望するやつもいないだろう。

勿論、ルームシェアを前提とした画期的な物件ではないのでオシャレな共有スペースもない。

あるのは古びた緑色の冷蔵庫と焦げついた鍋くらいのものだ。

安さの他にセールスポイントがあるとするなら、三十路の大器晩成型女と強制的に同居ができるという今世紀最大のトキメキだ。

女性もいたが五分もせうぬうちに帰ってしまった。

現実的に考えて、アイドル級のフェイスを持っているわけでもない、しかも三十路女と一緒に暮らそうという物好きな男は少ないはずである。

が、来るときは来るもので、なんとお医者さんの卵様とかもいたのだ。

そういや隣町に医学部がある大学があった。