三十路バンドギャルの憧憬邪心LOVE Grail

私は冷蔵庫の上にセッティングされた神棚に手を合わせる。

実家を出るとき母が「これはちゃんと付けるように」と煩かったのだ。神棚には月方家が信仰するコロッケの神様、言葉の語尾に断定助動詞の「なり」をつけるカラクリ侍のぬいぐるみが安置されている。


月方家の風習で外出時は神棚に手を合わせるのが鉄則なのだった。

この日本において、言葉の語尾に断定助動詞の「なり」をつけ、腕が掃除機のホースでできているカラクリ侍が神として祀られるとはキテレツな発明家も思わなかっただろう。


まさしく八百万の神とはこのことよ。
 
十九時半に送迎の車がやってきた。

私を乗せてお金持ちの青年の家へ連れて行ってくれる、はずもなく、四十手前の単身赴任の一人暮らしのオッサンの家だった。


どこかに金持ちがいるかもと、この仕事を選んだ節もあったが、いい金持ちのボンボンが風俗遊びを、しかも中級の人妻店で遊ぶかよって。


『ティファニーで朝食を』のホリー・ゴライトリーのように、奔放に、我が儘に生きて、素敵な実業家と出会うストーリーを切望していたのだけれども、私の前に現れたる男は役職もなさそうな窓際族のオッサンである。


私を見るなり、若いね、と驚く。

その反応、みんなするんで飽きちゃったわよ。

でも、わぁ、嬉しい、などと笑うのだ。

別に若作りしているわけでもない私が、ちょいと頑張ったナチュラルメイクで二十くらいに見られるのなら、本気でメイクすりゃ十代になるだろうかと考えながら、オッサンのパンツを脱がせる今日この頃。


そして二本目の仕事で深夜0時を超え、私はシックスナインの体位でアンアンと喘ぎながら三十路を迎えた。
 

ジーザス、尺八中に三十路バースデイなんて虚しくなるぜ、ワイルドだろ?