三十路バンドギャルの憧憬邪心LOVE Grail

特に父親との関係が悪化していった。

自分を悲劇のヒロインぶって、欲しいものさえ我慢すりゃいいだけの話だったのに、欲しいものが買えないのは貧乏な親のせいだ、だから闇の呪法に手を染めてしまったのだと、何でも父親を悪者にし、罪を擦り付けて逆ギレし、コロッケを投げつけ、ピアスを開けまくり、髪を染めまくった。


金に対しての執着も、この時期に根付いた。

私はどんどん高飛車になる。

誰も私を止められない。

私が正しいのだ。

私に平伏すのだと。

そうしなければ、壊れてしまいそうだったから。

この後、私の性格は明るく変化したといえよう。

横道に逸れたけれども、コスプレ製作の趣味ができ、ライヴの遠征時の情報交換もするようになり、人と話し、笑い、常識を再認識するようになり、世界の広がりに合わせて社会性が育まれていった。


微妙にね……。


バンギャルとしては、各地のライヴハウスの支配人にもバンドメンバーにも顔を覚えてもらえるほどになった。

バンギャル界で藍琥の名は忽ち拡散され、ネットの世界ではチュパカブラと並んで都市伝説扱いされていた。

チュパカブラは言い過ぎか。

クラスでは無名でも、バンギャル界では無敵だった。

私は黒歴史を汚点だとは思わない。私にとって私を形成する重要なファクターだったから。


どこか愛おしい思い出、毒の記憶。


それが、宇宙の旅が実現せず、クラスメイトの菊池君が血便を出し、校内女性教諭陣で最もブスと言われていた倫理の高安先生が授業中につわりを起こし一同が騒然とした二〇〇一年の出来事である。