三十路バンドギャルの憧憬邪心LOVE Grail

私は探していた。

ノートに子猫の絵を描いたりはしなかったが、銀河特急が私を連れてレティクル座へ向けて出発しないかとか、通学路で「力がほしいか?」と唐突に言われたりしないかとか、異界への入り口を。


そのとき出会ったのがヴィジュアルロックだった。

書店の音楽雑誌コーナーのマニアックなロック雑誌の表紙を見て電撃が走ったあの日、CDショップでバンドのCDを探しに行ったがなくて、それがメジャーアーティストでないと知るや、雑誌に紹介されていた専門店へ学校をサボって電車を乗り継ぎ駆け込んだ。


彼らは教えてくれた。

一人でもいいのだと。

一人のやつがカッコイイのだと。

闇の世界の中にも美麗な薔薇が咲いているのだと。

それが、君なのだと。

貪るようにV系バンドの曲に酔いしれ、メンバーを神々しい目で見ては崇めた。

世界を見下すようになった。

何もかもが恐くなくなった。

私は何だってできる。

藍琥は天才なのだ。

断るのをわかっていて、ある男子が悪戯で、カラオケ行かない? とからかうように言ってきたことがあった。

うるせぇよ、童貞。

私はもっともっと先の世界にいるのだ。

お前が毎晩、サキコって女子の裸を想像してオナってるの、わかりきってんだよ。そうしている間に私は社会人のクズのオッサンを相手に金儲けしてんだ。

大人の世界だ。

ガキは黙ってろ。

お子様は引っ込んでろ。

呪われろ~。

金はバンドに捧げる。

新たなパワーを、恐怖をなくす、魔力をもらうために。

そりゃ、私だって、それが神に禁じられたアダムの林檎だとわかっていた。
 
だから、親のせいにした。