「女か~?逢い引きか~!?」

「うるさいよージョルジュ。飲み過ぎないようにね」

上着を羽織り、軽口を叩いてから店を出る。

暗い道を数歩、ジュラが進んだ時だった。


「ジュラ・エーデシュ」


不意に冷たい声で名前を呼ばれた。

前を見ると、黒いコートを着たレオンハルトがこちらへ向かって歩いて来る姿が視界に映り、ジュラは些か驚いた。

「あれ?来ないんじゃなかったの?」

嫌みを感じさせない柔らかな口調で何気なく会話を始める。

しかしレオンハルトは何も答えなかった。

「まだ中でみんな飲んでるよ。顔出して来れば?喜ぶからさ」

親しげに近寄って、レオンハルトの肩を軽くポンと叩いたその時。

暗闇にナイフが光った。

レオンハルトの手に握られていたそれがジュラの胸元を突き刺す。

「ぐっ…あ!!」

ジュラの胸に激痛が走った。