割と短めにまとめられたそのエチュードのタイトルは《迸(ほとばし)り》。
加速する短調のメロディーラインは様々なテクニック練習を弾き手にさせると同時に、レオンハルト特有の音楽的情緒も要求してくる。
(あっ!今、音が…!)
明らかに外れた音がフローラの耳に飛び込んだ。
技術は申し分ないジュラだが、上手く感情を乗せようとして所々ミスを繰り返している。
ゆえに普段よりもどこかぎこちない演奏になっていた。
(頑張って!ジュラ…!)
派手な演奏で観衆を沸かすことが得意なジュラが見せる、少しおどおどした演奏。
時間的には僅か三分程度だったが、ドキドキしっぱなしのフローラにはそれが倍の長さに感じられた。



