「曲も派手なものが多いわね。クレイジーな鬼才よ」

「そんな方がいるなんて知らなかったわ」

興味をひかれる。

フローラがわくわくしながらジュラを見た時だった。

偶然にもジュラと目が合った。

瞬間、女性を身体の芯から蕩けさせるような甘い微笑が送られる。

「あ……」

不意打ちを受けてフローラの頬に熱が集まった。

彼の華やかな微笑みにはどんな女性でも胸が高鳴ってしまうだろう。

それだけジュラ・エーデシュなる青年は魅力的なのだ。

そのまま彼はピアノの前に座った。

先程までレオンハルトがいたそこに、今度はジュラがいる。

フローラは目をそらさずに彼のアクロバティックな演奏を間近で眺めた。

曲は最近流行りのギャロップ。

短いファンファーレから始まり、ギャロップのリズムに乗った軽快なメロディーが奏でられる。