あんな高いヒールでよく走っていられるな…。
河上さんの女子力に、私は心の中で引いてしまう何かを感じていた。
『んもぉ~!斗真ってば、勝手に別行動とか言ってどっか行っちゃうんだもんー!』
私と黒王子の間にちゃっかりと身を滑り込ませた河上さんは、私に見せつけるかのように、わざとらしく黒王子の腕に自分の白い腕を絡めている。
うわ…見てるだけで暑苦しい…。
傍から見れば、誰もが赤面してしまうような美男美女カップルな2人を見ても、この暑さにやられている私は、そんなズレたことしか考えられない。
『うるせぇ。暑いから離れろよ。』
それは黒王子も同じだったらしい。
いつもの冷たい態度と言葉で、河上さんの絡まっている腕を離そうとしているが、肝心の河上さんは絶対離さないとでも言いたげにピッタリと黒王子に引っ付いている。
……普通、こんな美人に密着されたら、男の人って瞬殺なんじゃないの?
ああ、見慣れてるから、そうでもないのか?
河上さんのキャピキャピぶりが見ていられなくて、そっと黒王子と河上さんから視線を逸らすと、不意に白王子と目が合った。
その瞬間、白王子はふにゃりと優しさが滲み出る笑顔を私に向ける。
癒しとは、こういうもののことを言うのだと感じた瞬間。

